今回は薯蕷饅頭の紹介です。シンプルで技が光る一品です。覚えたらすごいです。
まずは結論から、
(結論)
熟練の職人さえも失敗する。
機械化ができないほど、デリケートで難しく、とんでもなく奥が深い和菓子。
言葉で説明できないポイントが多いけど、
ポイントを押さえれば、大きな失敗はしない。失敗しても、美味しい。
多種多用途、ニーズが多い。マスターされたら、和菓子屋がガチで困るくらいの重要な和菓子。
自宅でみんな出来たら、和菓子屋さんが本当に困っちゃうくらいコスパがいいレシピかもしれないですよ。
なぜなら、
① 薯蕷饅頭は着色して、お祝い事の紅白饅頭として使われるなど、多様なニーズがある。
② 薯蕷(じょうよ)と書き、別名で上用(じょうよう)饅頭として、上等な手土産、献上品として扱われる。
③ ほとんどの和菓子屋で取り扱っているもの。
④ 菓子調理学校の試験科目。和菓子技能検定の試験の課題などになっている。
⑤ 手間暇がかかり、材料も良いので値段設定が高め。大量注文の場合は利益率が良い。
これほど、重要な和菓子が自宅でできちゃったら、和菓子屋さんも困ってしまいますね。
でも、簡単にまねしてできるわけではないんですよ。
環境×理論×技術のバランスがないとうまくいかない。とても深い和菓子なんですよ。
技術は初めてやる方もいるのでどうしようもないですが、理論や他のポイントを押さえれば、
失敗して、見た目が凄い惨状になっても、味は保証できます。とても美味しいですよ。
ポイントは長芋、大和芋を優しくすりおろして作る
まずは、薯蕷饅頭についての説明、レシピ、作り方を解説していきたいと思います。
薯蕷饅頭って?
薯蕷饅頭の定義
薯蕷=山芋のことです。
薯蕷饅頭は、すりおろした大和芋・山芋を砂糖と米粉の合わせた生地で、あんを包み蒸し上げた饅頭です。
しっとりとした薄皮とあんが、上品な味わいの薯蕷饅頭。シンプルですが、職人の技量やセンスが著しく表れ、店のレベルがわかる和菓子とも言われています。
薯蕷は蒸すと膨らむ性質があり。蒸しあげた饅頭の生地はふわふわ。しっとりとした肌理の細かい見た目と、上質な食感が特徴です。
京都地方はつくね芋、中部地方は伊勢芋、関東では大和芋。それぞれの土地でとれるものが使われているようです。
薯蕷の当て字となった上用の理由。
昔、和菓子は一般庶民には届かないくらい高価なものでした。
貴族など位が上の者しか食べることが出来なかった。上に用いる饅頭ということで上用饅頭とつけられた。
今はこちらの上用饅頭として広く定着していますね。現在は私たちにも手が届きますね。良い時代に生まれたもんだなぁ。
薯蕷饅頭の起源
室町時代初期に中国から帰化した林浄因(りんじょういん)さんに由来説が有力。
塩瀬の姓を名乗り、奈良に移住し、肉食禁止の僧侶のため小豆餡の入った饅頭を売り出したのが始まりです。
林浄因が作る饅頭は、ほのかな甘さが決め手となり、上流階級に大評判。後村上天皇に献上されるまでになりました。
塩瀬饅頭で有名な塩瀬総本家の始祖にあたる方にもなります。
関東と関西 で 生地の捏ね方 に明確な違いがある。
地域での砂糖・粉・芋の捏ね方の違いにより、出来上がりが変わります。
関東式 | 芋と砂糖を擦り混ぜて、薯蕷粉を揉み込む | やわらかい。ボリュームがある。こちらが主流 |
関西式 | 砂糖と薯蕷粉を混ぜた中にすりおろした芋を 揉み込む | 加熱した際、そんない膨らまない。 型打ちなどの模様を出しやすい。蒸す前に装飾ができる。 |
レシピ 27~30個分
(生地)
すりおろした大和芋 100g
上白糖 200g
上用(薯蕷)粉 120g
美味しい水 適量
(中餡)
小豆並餡(こしあん) 850g
生地ができる前に30gの餡玉にして用意しておくこと。
中餡は白餡でもOKです。できるだけ淡白な餡を入れて、芋生地の風味を引き立てよう。
※作るのは、大変なので市販の漉し餡でOKですよ!だいたい1g/2円で売っています。
こだわって作りたい方はこちらの漉し餡の作り方の記事をご覧ください。

数ある他サイトのレシピの中から、選んで頂いて本当にありがとうございます。
このレシピは働いていた店のレシピや、既存のレシピを改良したものです。
すごい時短になったり、効率的ではないとところもあると思いますが、 それでもプロが実践していて、美味しくなる理論や科学を基に手間をかけております。
最新の情報ではないこともあるかもしれませんがご了承ください。 また、理論があっていれば、他サイトさんのレシピでもできますので、そちらでも構いません。
何より美味しい和菓子を皆さんに召し上がっていただけたら嬉しいです。
すりおろした芋は熱に弱く、放置すると死んでしまいます。
温かいところに放置して生地を殺さないようにしよう。
生地を捏ねてからは手早く行いましょう。
蒸気で蒸す時に熱が入ります。
その時に、芋が最後の力を振り絞って、膨らんで美味しくなって
くれていると考えてあげて下さい。
作り方

衛生上の問題から、特別な場合を除き工場に機器が持ち込み厳禁。
その為、画像や動画がないものが多く分かりにくくて、本当ごめんなさい。でも本気で解説していきます。絶対に美味しくて、上質なものができます!



- 大和芋を水洗いする。皮むき、水に5分位漬ける。
★ 色焼けするようなら、薄い酢水につけて予防する。 - 目の細かいおろし金ですりおろしてボールなどの容器に入れる。
力を入れ過ぎると粗くなるので注意。
★ 目が粗いと生地の肌理も粗くなる。
★ すりおろしているときに、芋の小さい破片が生地に入らないように注意する。 - 芋のコシの強さを見て、水で調整する。(ここの塩梅は超重要)
着色する場合は、水で調整する前に行う。
(ごめんなさい。目安をはっきりと言葉では説明できません。体感するしかありません。)
★ 蒸して膨み、生地が破れる直前ギリギリの塩梅にしたい。
職人は、この後の、捏ねる工程での空気の入れ具合も計算して、ここで塩梅をとる。
★ 芋は1年中取れるが、夏はコシが弱く、イスパタなどの補助材料を使用する店もある。
逆に冬はコシが強い芋が多く、本来の芋のコシだけで、膨張が期待できる。
コシが強すぎても膨張せずに、割れるだけの場合がある。
膨らみすぎて割れる場合もあるので、芋のコシをここでうまく調整する。 - 砂糖を3回に分けて加えて、麺棒で擦り混ぜる。砂糖が馴染んで混ざればよい程度。
砂糖が入ると、冷蔵庫で2,3日保存ができる。真空にすれば冷凍可能。
★ 一度に加えると、生地がばらけてなかなか混ざらなくなる。
そうすると、混ぜる回数が増えて、芋のコシが切れてしまうので注意。
★ 空気が多少入って、ボリュームがすこしアップするくらいなら良い。やりすぎると×
★ 砂糖が入った状態で一晩冷蔵庫で寝かせると馴染んで、生地が安定しやすい。 - 上用(薯蕷)粉を入れたボールに4を入れて、折りたたむようにして、徐々に捏ねていく。
ここで生地の運命が大きく変わります。
熟練の職人でも失敗する捏ね作業。
★ 粉は生地がコシが強すぎた場合は馴染みづらいので注意。
★ 捏ねあげたときの生地温度が10℃以下がベスト。温かいと生地が死ぬ。
★ 織り込んで、周りから混ぜていく感じで、平均に入れて、全体の固さを均一にする。
★ 生地をたたいて、ポンポンと音がすればだいたいOK! - 上用(薯蕷)粉を手粉にして、生地を15gに切っていく。
30gの餡を包む。 - セイロや蒸し器にセパレート紙やクッキングシートを敷き、その上に包んだ饅頭を並べていく。
膨らむので、指3本分くらいの間隔をあけて並べていく。 - 表面の粉を刷毛で払い、水の霧吹きをかけ、中火で12分~15分程度蒸す。
家庭では、最初の4分間はやや強い火で圧力、蒸気にかけて9割ふくらませて下さい。
その後、火と蓋の空け具合で圧を弱めて、生地に火を入れて下さい。強すぎると割れます。
★ 水の吹きかけ量は全体が湿って艶が出る程度。
★ あまりおすすめしないが、どうしても割れる場合はコシを切った卵白や酢水を蒸す前に生地表面に塗ると割れづらい。
和菓子屋では、最初の3分間に8~9割膨らませます。
その後に3分毎に、セロベータで饅頭が入った蒸し器を一段上にあげ、
下に新しい別のセイロをいれて、熱源から饅頭を遠ざけて火の入り方を調整しています。 - 蒸し上がったかは、饅頭の底を見て生ではないか確認。
- 蒸し器から取り出して、できあがりです。

薯蕷饅頭 が 超絶 美味しいお店。

私は、薯蕷まんじゅう結構好きなので、旅行とか行く先々で買うんですよね。
ここが一番好きです。寄る機会がなかなかないけど、行ったら必ず買います。
仕事や出張で静岡県に突入した瞬間に、どうにかしてこの店に行けないか考える位(笑)。
美味しさがいつも抜群に安定しているんです。これってめちゃくちゃすごいことなんだよ。
デパ地下とかで入ってる大手の薯蕷饅頭とかも美味しいんです。
しかし、私はいつも味にムラがあるように感じてしまいます。
環境に合わせて配合や作り方を変えて対応してるし、機械で同じように正確に生地を捏ねていても、
なぜかけっこうムラがあるように感じます。
このお店はいつも同じ絶妙な美味しさ。
なんだ当たり前のことじゃんって聞こえますが、この扱いの難しい薯蕷を使って、
毎回同じような
塩梅にすることがどれだけ難しいことか。
しかも、このぎりぎり割れる直前まで膨らませた、この技術。光るものがありますね。
どこにでもありそうな地域に馴染んだ和菓子屋さんですが、
どこにでもないような技術と、当たり前でない継続性のある抜群の美味しさ。
職人として敬意を表します。
まだまだ食べたことのない店の薯蕷饅頭あるけど、私の知る限りでは日本一だと思います。
皆さんも是非、何回か食べてみてください。
伊豆に寄った際は、いや静岡に行った際は是非立ち寄って見て下さい。
コメント